第1章【童貞】

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「それにッ! 自転車で歩道をばしっ……走ったら危ないジャマイカ!」 「ジャマイカ?」 とかく息切れと撥音で聴き取り辛い。要するに自転車の分際で人様の歩道を走るな、と言いたいらしい。 「いや、車道なんか走ったら俺が死ぬから」 歩行者と自動車は自転車と解り合えない。しかし下らない事で警察官を怒らせて転び公妨を食らってもつまらない。 少なくとも警察官は本気だ。 「じゃあ解りました、軽車両として車道を走ります」 わざとらしく敬礼をし、車が途切れた隙に車道へ見事堂々と出て行った。 「ぬあっ!」 警察官は慌てて笛を吹いた。車道もクラクションの嵐になり運転手がギャーギャー礼儀正しく騒いでいる。 「車道の真ん中を走るな!!」 結局お説教。ある意味、立派な公務執行妨害だ。しかも田辺義則、出で立ちが不良っぽいことも有りお説教は長引いた。 甚だ自己責任だが、学校に遅刻してしまう。
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