お題☆龍

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 旅館の裏口につくと息子はまだ入ってこないでね、と言いながら小さく扉を開けた。  息子が中に入って数秒がたつ。 「入ってきていいよ!」 龍久は息子の声がすると同時に、わくわくしながら扉を開けた。そこには旅館のスリッパを天に向かって積み重ね、てっぺんに顔が貼りつけてある龍がいた。 「すごいでしょ! 1人で作ったんだよ!」 息子はこれでもかと胸を張る。 「すごいなぁ!」 龍久は何度もスリッパを重ねなおしながら、一生懸命に龍を作っている息子の姿を想像して、くすりと笑った。 「でしょ! 今年はとうちゃんの年なんでしょ? これあげる! とうちゃん大好き!」 息子の何気ない言葉で龍久の視界がうっすらと歪む。 「とうちゃんのために作ってくれたのか。ありがとう、ありがとう」 龍久は涙を隠すように息子を思いっきり抱きしめた。 ――多分、それは、すぐ近くに家族の温もりがあるからだろう
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