95人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと、兄さん……」
と、声を掛けようとしたところで、彼は異常な気配に気がついた。空気が緊張しているような、嫌な気配。ヴァンが過去、何度も察知してはいつも回避してきた危険な気配、ヴァンはその気配に敏感なため、今まで生きてくることができたのだ。
この国で戦争は日常茶飯事であり、ヴァンは戦災孤児だった。彼はこの街では無く、ここよりもより隣国に近い隣村の生まれだった。彼がまだ赤ん坊だった頃、彼の生まれた村は襲撃を受け、村は焼き払われた。そして、彼の両親はその時に命を失ったのだ。彼を見つけたこの町の男は、焼け残った家の中で息を潜めているヴァンを見つけ、驚いた。生き残りがいるなどとは思わなかったからだ。街はそれほどひどい状況だった。その様な環境で生き残ったヴァンは何故か危険を即座に感じ取る才能を持っていた。
最初のコメントを投稿しよう!