足音の無い男

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 しかし次の瞬間、ベンスンの丸太ほどの太さを持つ腕は空を切り、勢い余った形で店のカウンターを粉砕した。 「おい、ベンスン、弁償してもらうよ」  女将がそんな苦情を言い終わらない内に、ベンスンの体は空中を一回転すると、地面に叩き付けられていた。周囲の男達の目には、ベンスンが自ら姿勢を崩し、そのままの勢いで倒れたように映った事だろう。 「おいおい、ベンスン、大丈夫かよ」  野次馬の一人が男がその横にかがみ込むと、 「こりゃ、だめだ。気絶してやがる。情けねえな」と、その様子を確認して報告した。
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