1431人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、重いー……」
あてのちっこい身体には明らかに不釣合いな、超巨大四角ボックスを地面スレスレの高さで何とか両手で持ち上げながら、私はフラフラと前に進む。
「文句を言うな。しっかり働けガルーダ」
そう言いながら手ぶらで前を歩くのは、一ノ瀬 玲。アークのお父さん。
S・A・D施設内の、今あて達二人がいる通路には、他に人の姿はない。
それもそのはず。ここは施設の中でも思いっきり端っこの方で、ある部屋と言えば使わなくなったガラクタを放り込む物置か、逆に人の手が触れないように、危険なものを厳重に閉まっておく倉庫の二つしかない。
そう言うわけで照明も若干暗く、ついでにあてのテンションも若干暗く……。
「もう疲れたよー……」
「しばらくはタダ働きの約束だろう。俺は容赦しないと言ったぞ」
「アークと遊びたいよー」
「仕事が終わったらな」
今あてが持ってる荷物の中身は、さっき言った内の後者にあたる。
つまり、危険な代物だ。
魔法を使えば、この程度運ぶのは造作もないのだが、派手に魔力を行使すると、この箱の中の物体はそれに反応して『何か』を発動するらしい。
と言うわけで、あては殆ど魔力すら纏わずにこれを運んでいる。死にそう。
「玲さんも手伝ってくれてもいいじゃんっ」
「嫌だ。重い」
「えーっ」
「これくらいやらないと、罰にならないだろ」
と言いながら、今日でもうタダ働き一ヶ月目。
一体いつまでやらされるのか。
と口では文句を言うものの、玲さん、ミリアさん、そしてアークが望むのなら、あてはいつまででも奴隷のように働く所存だ。
だって、あてがしでかした罪はそう簡単に消えるものじゃないから。
あてが怪物から人間になる為に、この罰は必要な儀式だから。
だからあてはやる。辛くても、やる。
「駄目。もう限界」
でも、疲れるものは疲れるのである。
あては力尽きて、その場に荷物を置くとへたり込んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!