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「……」
「……」
さっきから沈黙が続いている。
それもそのはず、俺は今、父さんと食事をともにしているのだ。
なぜこんな状況になったんだろう。
正直、父さんが何を考えているのか分からない。
たまたま実家に帰った時に、珍しく父さんがいて、気まずくて挨拶もそこそこに家を出ようとしたら、
「ご飯でも食べていきなさい」
と引き止められたのだ。
俺は自分の耳を疑ったが、どうやら本当らしく、断ることが出来なくて今に至るというわけだ。
これはかなり貴重だ。
誘われたこともだし、今まで父さんと食事したことが何回あった?
緊張と張りつめたような空気に、とりあえず口に運ぶ食事も味がよく分からなくて。
広い室内に、食器がぶつかる音や時計が時を刻む音だけが響いていた。
「……來斗」
「!はい」
ようやく口を開いた父さん。
久しぶりに名前を呼ばれた気がして、ドキリとした。
「…仕事は順調か?」
「え?うん。まあ…」
何、仕事の話?
「そうか。ならいいんだが」
「うん…」
変だ。明らかにおかしい。
いつもの父さんらしくない。
どうしたんだろう…。
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