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「倖。」
「ふぁいっ」
ふぁいって何。
ちょ、俺落ち着け?
椎葉の顔がだんだん近づいてきたと思ったらゼロ距離になる。
互いの睫毛がぶつかり合うくらいの距離に最強の不良が、美形があるというこの状況は気絶寸前だ。
「もうこの味飽きたから、やる。」
「へ…?…ッ、ムグッ!?」
カロン、と俺の口の中から音がする。
舌の上に、ジワジワと甘い味が広がっていった。
あ、あ、飴じゃ。
苺味の飴じゃ。
状況を少しずつ理解していく俺の顔は、みるみる赤くなる。
く………………
くくくくくくくくくくくくくく
口移しししししししししししししししし???
俺の顔色の変化をそれはそれは楽しそうに椎葉は眺めて、不適な笑みを浮かべた。
「今の倖にそっくりだろ…その飴。」
キエエエエエエエエ
からかわれた!からかわれた!恥ずかしい!くやしい!でもイケメンだから許される!それが世の中!何言ってるのか自分でも分からない!
「ぅぅ、椎葉の、意地悪…!」
キモい台詞を言っている自覚はある。
「…はぁ…」
え゙!?ため息!?
「黙ってりゃよかったのに………………食いたくなった。噛む。」
「え゙え゙え゙っ!?ちょ、ちょ、待っ……………痛ぁーーー!!!!」
「あー平和だ。」
宮田大地は煙草をふかしながら、明後日の方向をみつめていた。
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