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森田緋がいなくなり、再び部屋の雰囲気がガラリと変わった。
静寂が室内を包み、緊張により俺の冷や汗が頬を伝う。
「…さて、田中倖。お前に聞きたいことが二つほどある。」
煙草に火を着けた後、長い指をピッと二本立てた。
「一つは、何故お前はここにいるのか。もう一つは………"瀬良椎葉"を知らないと、何故嘘をついたのか。」
ぎく、と体が強張る。
口がからからに乾いていくのを感じながら、なんとか声を出す。
「ここには、アルバイトの募集があったので、働きたいと思って面接に来ました…そ、それが理由です。」
「なるほどな。この前、お前に初めて会った時も深夜にこの店の前に居たな。それは何故だ?」
ううっ、この尋問ヤダ!取り調べみたいなのヤダ!
でもそういうプレイを妄想するのは好き!
モワモワ~~ン
『どうなんだ?お前がやったのか?ん?吐いたら楽になるぞ。カツ丼食うか?』
『ぼ、僕はやってません!』
『怪しいな。ちょっと体を調べさせてもらおうか?』
『あっ、なにを!?』
『ボディチェックさ。怪しい所は無いな、へへへ…』
グヘ、グフフ…ふへへ…
「悪いがな、取り調べを受けてカツ丼を出すところはあまり無い。」
ふええっ!?
突然鐘崎刑事の冷静な指摘に驚いて一気に現実に引き戻される。
「そして取り調べ室でボディチェックもあまりしない。」
ヒイイイイ
ヒイイイイ
俺、こ、声に出してた!?
「お、俺はどこまで喋っちまったんですか!!」
「いや…別に、急にお前が虚ろな目になって『取り調べ…』『カツ丼…』『ボディチェック…』とか単語単語で呟いていたからな。警察に対しての勘違いを指摘したまでだ。」
単語か!あっぶね!
えーと、質問何だっけ。あ、何で深夜までコンビニの前に立ってたのかってことか。
………やべ。
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