刑事×店

6/30
前へ
/48ページ
次へ
再び、鐘崎刑事は穏やかな笑みを浮かべる。 「お前もな…。お前は、やはり良いガキだ…感情も分かりやすい…」 良いガキって!言い方が微妙! 「だが、俺も意地悪な質問の仕方をした。俺の質問を覚えているか…?『瀬良椎葉って男を知ってるか』と俺は聞いた。お前が返した言葉は、『知りません。』だ…。」 そ、それのどこがおかしいってんだ!? 「不良率が高いことでも名高い黒島高校に半年以上通い、不良のトップを知らないなんて話はないだろう。高校どころか、近隣の高校生まで知ってるくらいだからな…」 うっ。た、確かに。 「普通、瀬良椎葉と関わりの無い黒島の学生は『学校でトップの不良です』とか答えるはずだ。しかしお前は瀬良椎葉との関わりを隠したいという気持ちが強いあまり、質問の『知ってるか』という言葉だけを過剰に捉えてしまったというわけだ…」 うわぁぁ刑事って怖ぇよぉぉ!!! 「さて、俺は帰るとするか。邪魔したな…バイト頑張れよ。」 え、え、本当に帰るの!? だって、あんなに俺の話を聞きたがってたのに…! 何でだよ?刑事なのに… 「あ、の…!深夜、俺がなんで突っ立ってたのとかは…聞かないんです、か」 うわうわ、うわ! 馬鹿か俺は!話したくないことなのに自分から蒸し返すなんて! 鐘崎刑事は、静かに答える。 「人には、どうしても話せない理由がある…。プライベートまで頭突っ込んで、心の傷抉るようなことしてまで無理に聞きたくねぇんだ…」 だから向こうから話してくれるのを待つ、と鐘崎刑事は言う。 「こんなこと言うの、刑事失格だけどな…」 そう言った顔は、とても寂しげだった。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4504人が本棚に入れています
本棚に追加