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死人の群れの中に一人の青年が立っていた。
漆黒の長髪に切れ長の目。鼻筋はスッとしており、他の死者達とは違う雰囲気を放っていた。
その青年の名は『波風 骸-なみかぜ むくろ-』。
彼は理解していた。自分が死んだってことを。
骸は死者の群れを掻き分け、先に進む。先に進むにつれて視界に映り込む一体の人外の姿。
フード付き黒衣の中身は骸骨。その手には深紅に煌めく大鎌。
骸は少し目を見開いたが、世界が世界なだけに理解するのも早かった。
眼前には『死神』が居た。その背後にはユラユラと流れる川。
(なるほど…“三途の川”って奴か。…だが、死神の横にあるのはなんだ?)
死神の横には円型の風呂のようなもの。ボコボコと沸騰しており湯気が空に向かって立ち上っていた。
「風呂にでも浸かれってことか?」
小声で呟き、死神に近付いていく。
その時、
『静まれ!!!』
死神が叫び、場が静まり返る。
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