梅昆布茶と宝石泥棒

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 自分の車が見えてくると、男はポケットの中で鍵をあける。車のライトがピピッと音をたてて光った。妻は懐かしい音を聞き、空を見上げた。 「さぁ、どうぞ」  男は助手席のドアを開け、妻を促す。 「ありがとう。あなた昔と変わらないわね」 「そうでもないよ」  照れ臭いのか、指輪の事を引きずっているのか、そっけなく返す。しかし妻は、そんなことを気にすることもなく男に笑いかけた。 「こうやって車の戸を開けてくれる人はなかなかいないわよ」  男はそうかな、と軽く言いドアを閉める。車の前を通りながら唇を軽く噛む。妻の発する言葉を全部浮気に関連付けてしまう自分が気に食わないのだ。  慣れた手つきで座席に座り、シートベルトをしめ、エンジンをかける。フロントガラスがみせる妻を見ながら、男はもし自分なら、愛してほしいなんて贅沢は言わない。その代わり、自分の側にいつまでもいて欲しいと願うだろうな、と思う。 「あなた?」  男がなかなか車を発進させない事を不思議に思った妻は、声を掛ける。 「あっ、あぁすまん」  妻の声ではっと我に返り、ゆっくりとブレーキペダルから足を離した。
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