何も変わらない日常

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 さっきまで喚いていた人は口を大きく開けている。周りが水を打ったように静かになる。  僕は君が愛しくて更に強く抱き締め、君の首に顔を埋めた。 カラン  君は呪縛から解き放たれたのだ。これが愛の力てやつかな?  君が包丁を落としたことにより、うるさい声があがる。 「確保!!」  その声が引き金となり、周りに音が戻る。あぁ、うるさいな。僕達の愛し合っている姿が見えていないのか?  ずっとずっとずっと抱き締めていたいよ。君を愛して愛して止まない。  ねぇ? どうして?  身体の底から震えるのは、君が優しい証拠。澄んだ瞳から溢れる涙は、君が欲の無い証拠じゃないか。  僕は警察が君を連れ去った理由(いみ)が分からないよ。これが真実。  どうせ君の手にわたる前に、警察? 看守? 刑事? まぁ誰だっていい。僕から君を奪っていった誰かが読んでいるのだろう?  さぁ、真実はここに記した通り。  早く、僕の可愛い彼女を汚いブタ箱から出しておくれ。僕はいつでも闘える。弁護士だって用意している。このまま無罪の彼女をそこに留める気なら、こちらも黙ってはいない。  早く愛しい君が僕の隣に戻って来ることを切に願って――
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