3話 その生徒、落ちこぼれにつき

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「は、はい、報告書、まとめて、一週間後、生徒会に」 「あいあい、了解ですよ。 たく、部費の陳情とかはその生徒会の仕事だろうがねえ」 「い、言っちゃダメ。 ここの、生徒会、教師より、その、あの」 「生徒は生徒、先生は先生。 ちゃんとライン引いて仕事しなきゃ。 まあいいです、これは僕が今日中に仕上げます」 サラっと言い放ったその言葉に、ギディヌは驚きを隠せない様子で言った。 「そ、それ、とても大変な」 「作業です? そうですかねえ、これくらいの計算だの意見書だの、ちょちょいと終わりますよ」 そう言うとレフィは椅子に座り、机に向かい合って書類をまとめ始めた。 部費の陳情、意見書、報告書、そんなものはレフィにとっては模様にしか見えない。そこに込められた気持ちや内容など、レフィは理解しようとしないのだ。 机に置いて、まっさらの白紙を取り出す。昔の時代にあったものを現代技術で蘇らせた『電卓』というものを出す。 昔の時代ではただ数字をディスプレイに映すだけのものだったが、今の能力技術では演算も比べ物にならないほど上がっているし、何より数字がホログラムという技術で目の前に映し出されるのだ。 次に文字が刻まれた複数のボタンがある、昔の時代にあった『パソコン』というものを昇華させた『アウターコンソール』、略して『アウコン』を取り出した。 これも昔はディスプレイに映像を映すものだったが、これもスイッチ一つで映像をホログラムで映し、さらに演算能力も上がっているものだ。 「じゃあ二時間、時間をください。 まとめて渡します」 「は、はい。 す、ごいです、レフィさん」 「んー、そうですかねえ。 こんな文字、変な形の連なりのようなもんです。 コツさえ掴めばすぐに出来るようになります。 それより、僕はギディヌさんの方がすごいと思いますよ」 「な、なんで?」 「だって、こんな模様から気持ちとかを感じ取ろうとしてるんですから。 知ってますよ、いつも報告書とかじっくり読んでるでしょ。 生徒の気持ちとか困ったこととか、教師じゃないのに親身になろうとしてんですからね、すごいですよ」 「あ、あいいいぃぃ……。 見られてたん、ですかぁぁ……」 顔を真っ赤にしてギディヌは俯いた。
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