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「僕は都合のいい、清らかな精神を持つ先生じゃない。 そもそも、僕は外力剄を知ってるだけで剄術師じゃないんだ。
お前に教えることが出来るほど技術はない」
「嘘だ。
先生は嘘を吐いてる。
聞きましたよ、あのノワールくんをぶっ飛ばしたそうじゃないですか。 それだけの力があって、教えることが出来ないなんて」
「……僕のは厳密に言えば剄術じゃない。 コツさえ掴めば誰でも出来る『技術』だ。 能力なんて大層なものじゃない。
先生には話を通す。 今はそれで我慢しろ」
それだけ言うと、レフィは背を向けて歩き出した。振り向くつもりはない、後ろで燐がどんな顔をしているのか。落胆しているのか、絶望しているのか。レフィは興味なかった。
歩くレフィの隣を、ナリルが追いついてきた。見なくとも怒っているのは様子で分かる。
「レフィさん! どうしてその外力剄とやらを教えてあげないのさ!」
「僕にメリットがないと言ってるだろ」
「また、そんなことを!」
「本当のことだ。
今、力を渇望してるあいつに外力剄を教えたとしよう。 外力剄ってのは自分の体を壊しながら発動する術形態だ。 そうすれば、あいつは自分の体が壊れることを厭わず、使い続ける。 で、壊れてしまったら僕の監督責任だ、だからメリットがない」
「え……?」
ナリルは意外そうな顔をした。
「それって、燐くんの事を心配して……?」
「さてね。 僕はアナグラの任務を早く、穏便に済ませまいだけだ」
「任務?」
「おっと、口が滑った。
忘れろ、僕は事務室に戻らなきゃいけないんだ」
歩くスピードを上げて、レフィはナリルを振り切った。
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