3話 その生徒、落ちこぼれにつき

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「……というわけで、今からこのギディヌさんがお前の指導をしてくれる」 「分かりました帰ります」 体育館、背を向けて帰ろうとした燐の背後から発砲音、燐の顔の横を通過し扉にぶち当たった。 煙を上げて弾丸の跡を残し、貫通した扉を見て、燐の足が止まる。 燐のこめかみから、冷や汗が流れる。 「何帰ろうとしてやがる。 せっかく僕が指導者を連れてきたんだぞ」 リボルバーの空薬莢を排出しながらレフィは告げる。 「あ、あの、レフィさん、む、無茶は」 それを慌てた様子でギディヌが止めようとするが、レフィはちっちっち、と指を振ってそれを流した。 「何言ってるんです。仕事の合間でいいという条件で無理言って来てもらったんです。 あいつにはちゃんと指導受けさせますんで、よろしくお願いします」 「で、でも私、外力勁どころか、勁術、さえ久しぶりで……」 「ほら見ろ先生」 冷や汗を拭って、燐は振り返った。若干涙目だが、誰も言わなかった。 「だいたいその人事務員だろ。強くもないし優れてるわけでもない、指導者として疑うのは当たり前だ」 「ほう……強くないと」 目を細めてレフィは言った。 「それは自分で体感してみるんだな。 ギディヌさん、打ち合わせ通りに」 「え、は、はい」 ギディヌは精神の集中に入った。 滲み出る『紅』の力、荒ぶるエネルギーはギディヌの体に薄皮一枚、纏うように収まった。 これは、普通ありえないことだ。それは燐が目を疑うどころか、目の前の人間を事務員だということを忘れさせるには十分すぎる。 常に動き、荒々しく胎動する『紅』。それを完全に『碧』のように完全に操るのは並大抵のことではない。才能と時間がどれだけあっても足りないだろう。 ちなみにこれは『蒼』にも『碧』にも適用させる。『蒼』を荒々しく力強く操ることも、『碧』を流れさせることも、普通ではできない。
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