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「それって、普通の剄術と何が違うんです?」
「そうだな、例えばの話。
僕がお前の顔面を殴ろうとする。
で、お前がそれを避けてカウンターを打つとしよう。 その間に結構考えてるだろ?」
「まず『避け』て『攻撃姿勢』に入って『打つ』……。
三回は考えてますね」
「熟練した術者なんかはその思考が限りなく無いに等しい。それこそコンマ数秒の世界。
でも、『操体』はその考えのプロセスを自動化、拳が来た時点で最適な体の動きを勝手にしてくれる。考える必要が無くなる。
コンマ数秒なんて目じゃない、スタートダッシュが違うんだ」
「そ、そう、です。
で、も、外力剄は、それだけじゃ、ないです」
今度はギディヌが口を開いた。そして懐から一枚の紙を取り出す。
「レフィ先生、も、外力剄、を、少しご、誤解してま、す。
そもそも、剄術は、エネルギーを、そのまま、使うんです。
内力剄、は、体の、内側、で。
外力剄、は、体の、外側、で。
く、工夫、すれば」
ギディヌは紙を宙へ離すと、右手を振るって一閃した。とても事務員の動きではない見事な手刀。
それは紙を真ん中から縦に両断した。無論刃物など使っていない、正真正銘、ただの手刀だ。
だが、紙はまるで刃物で斬ったかのような切り口で床に落ちた。
「今のは、中級剄術、『剄刀』。
エネルギーを、薄く、鋭く、形を変えて、剣のように、変える」
ギディヌは燐へ示すように右手を出した。そこには燐の常識を覆しかねない、洗練されたエネルギー操作が行われていた。
『紅』のエネルギーが手のひらから指先まで覆われており、薄く包むように操作されている。完全にエネルギーを留め、手中に収めている。
ここまでのエネルギー操作など、燐は見たこと無い。
「こ、これから、まず、燐君には、徹夜で学んで、貰います。
じ、時間がないですか、ら 」
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