4話 その女、用心棒につき

6/19
前へ
/163ページ
次へ
「『精霊降ろし・シルフ』か……。 なるほど、成績優秀な模範的生徒、ね」 「ほざくなや。 見せたるよ、世界に干渉する理不尽な力を!」 梓がレフィへ手をかざすと、レフィを中心に真空を作り出した。呼吸できず、大気の変動でレフィの顔に苦痛が生まれる。 誤解を招きやすいのだが、基本真空を作り出しても体がズタズタに切り裂かれることはない。風で体が切れるのは、突風などにより巻き上げられた砂塵が肌を切り裂くからだと言われている。 真空で一番恐れること、それは急激な減温と窒息状態。 山など、登れば登ほど気圧が下がり温度も減少するように、大気圧より低い状態になる真空での温度の減少は計り知れない。 レフィの髪の毛の先がだんだんと凍り始めた。 「どうや、これがうちの力や! まあ、今のあんたにはうちの言葉は聞こえへんやろけどな!」 その姿を見て、梓は勝ちを確信する。 真空状態であることは、振動するべき大気がない。つまり音が伝わらない。 この状態では、レフィは何の音も聞こえてないはずだ。 そして、銃も使えない。燃焼する気体が無ければ弾を撃つことも出来ない。 梓はレフィを殺すつもりはない。ただ力の差を見せつけるのみ。 真空状態で人間が最大活動できる時間はおよそ二分、それに達する前に真空を解除するつもりだった。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

307人が本棚に入れています
本棚に追加