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瞬間、視線。
背筋に寒気を、全身に悪寒を、今まで感じたことのないような、言葉で言い表せないような、言うなれば大容量の殺気を叩き込まれる感覚。
思わず手足の先が震え出す感覚を覚えた梓の目に映ったのは、これまでの人生で見たことのないほどの鋭い眼差しと怒りを滲ませるレフィの瞳だった。
人は人を見るとき、人と認識する。当たり前だがそれが人間の目だ。目で見た者をそのまま認識する。
だが、レフィの目は違う。梓を人間とも、生き物とも認識していない。正確には、梓という人間を見ていない。
それは、敵意。
生き物だろうが機械だろうが関係ない、動物だろうが人間だろうが、ましてや道端に転がる石だろうが関係のない、純粋に敵を見る瞳。
(な、なんなん、こいつ、何でこんな目が出来るん!?)
思わず力がブレてしまうほどの恐怖が、梓の頭を支配する。同年代と喧嘩するときなどとは比べものにならない、殺意。
次の瞬間、レフィが消えた。
見失ったとか、あまりの速さに付いていけないとか、そういった類やレベルではなく、本当に『消えた』。
そして、刀の切っ先が自分の喉元に突きつけられたことにも気付けない。
いつの間にか抜刀したレフィが、真空空間から抜け出し、刀の間合いに進入していたのだ。
ようやく気付けたときには遅く、梓は大きく呼吸を始める。殺意と殺気で忘れていた呼吸を、酸素を求めるように。
「ぷっは……。 人間を真空に閉じ込めるとか、何考えてやがる。
僕じゃなきゃ死んでるぞ」
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