1話 その男、厄介者につき

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新暦2012年。 世界は機械中心の旧暦から、魔術や異能力が中心となった新暦に変わった。旧暦の世界の名前は明らかになっていないが、新暦から名前を新たに『倶梨伽羅』と名付けられた。 能力、それすなわち『超常現象を意図的に起こす』力を指す。炎を発生させ、雷を落とし、傷ついた人を癒やす。超人的な身体能力に体を強化することも、霊的存在にアクセスすることさえ可能にする。 そんな超常現象を意図的に発生させる力であるが、人はその力を正しく使えたのは歴史の中、片手の指で数えられるか分からないほどだ。ほとんどは虐殺の歴史であり、それが二千年続いた。 そして、世界は一つの国に統一された。 神帝国アナフィア。 従来の序列のわかりにくい『貴族』という身分を廃した少数の上流階級『神帝族』と呼ばれる政治面に優れた一族と、それを支えた『色彩四家』と呼ばれる軍部の一族が、わずか数年で近隣諸国どころか大陸を制覇し、新たな秩序を確立させた。 これにより旧暦のほとんどの機械技術が失われ、新たに能力技術が世界を覆った。 そんな時代だからこそ、能力を悪用する人間が絶えることはない。無論警察というものはある、だがそれだけでは追いつかないのが現状だ。だからレフィやナリルが所属する、『アナグラ』という呼称の組織を設立することが許可されている。 「うー、頭が痛いのさ……」 「仕事ごまかして騙そうとするのが悪いよ」 「レフィさんが協力してくれればなんとかなったのさー!」 「ちなみに僕、仕事は一人でしてるしさ、アナグラじゃ浮いてて僕を仕事に誘う人いないから、マスターのじじいならすぐに分かるよ」 「うそ!?」 たんこぶを作ったナリルとレフィが並んでアナグラの扉をくぐった。
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