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そして完全にその姿が見えなくなるまで見ていたとき、ふとナリルは気づいた。
腰に下げられたら大太刀とリボルバーの存在。
(今の時代に銃火器に刃物……?)
この時代でその存在は極めて珍しい。希少価値と言っても過言ではないし、実際に王立博物館などに行けば旧時代の骨董品のようなものは見ることが出来る。
だが、実際に使うものはいない。
新時代になってからは誰もが何かしらの力を秘めている。水を操り、火を起こす。むしろそれらの速さと精度を極めるほうが効率的と言える。
もしかしたらとっさの護身用なのかもしれない。それに今考えるのは、ナリルにとってそこじゃない。
「くー、腹立つ人さー!」
ナリルは本当に怒った様子で拳を握りしめた。そしてレフィとは反対方向に足を向ける。
(完全に嘗められてるのさー!
これでもあたしは強いのに!
学校でも上なんだから!)
イライラする気持ちを募らせてナリルが向かったのは、何時も行く馴染みの店だった。
アナグラがあるここグンダイ地区の中で、なかなか良心的でご飯が美味しい店がある。アナグラの近くにあることもあってすぐに着く。ナリルはその店の前に立った。
食事処『アイフィー』と呼ばれるここは、今時珍しい麺類屋。無論パンやご飯もあるが、名物は旧時代に流行ったとされる『ヤーメン』だ。
「とりあえず食べれば落ち着くさー」
ナリルが中に入ると、そこはすでに人でごった返していた。今日も繁盛しているらしい。
ナリルはいつものように中を歩いて自分の席に向かう。ここは変わっていて、旧時代のどこかの国が使用していたとされる『タタミ』とやらの座敷がいくつかあり、そこに足の低いテーブルが据えられている。
この座敷、素足で上がらなければならないが、敷き詰め編み上げられた草の感触が気持ちいい。ナリルにとってこの感覚は好きだった。
座敷に上がって座ると、すぐにウェイトレスが来た。人懐っこい笑顔をした少年で、私服の上にエプロンを着ている。
「ナリル姉、そろそろ来ると思った」
「やーやー、ナアヤ、いつもの頼むさー」
「うん、分かった。
五番座敷、ヤーメンしなちく抜き入ります」
伝票に注文を書き、ナアヤはパタパタと厨房に向かっていった。
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