1話 その男、厄介者につき

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ある朝、アナフィアの街に太陽が昇る。その光は街を照らし、人々は活動を開始する。 仕事するもの、仕事を探すもの、ただ散歩するもの、それだけでもたくさんの人が街を出歩き始める時間帯。街は、目を覚ます。 そんな街の中、とある仲介所兼酒場『アナグラ』に一人の少女が入った。酒場にいた男たちも振り返るが、いつものことなのか笑顔で返す。 「こんちは、おっちゃんたち!」 「ようナリルのお嬢ちゃん! いつも元気じゃねえか!」 「もちろんなのさー! 今日は初仕事の初給料日だから、元気がでるさー」 ナリルと呼ばれた少女は、元気よく手を振って答えた。青の短髪に健康的に焼けた肌、少女はスカートを翻し返す。 「なんだスパッツかよ。 色気ねえな」 「失礼だよ、おっちゃん!」 ナリルはスカートを押さえて言った。 「それより……あ、カナッチェさん!」 「あらー、ナリルちゃん。 いらっしゃーい」 カナッチェと呼ばれた、大人の雰囲気を漂わせる美人がカウンターで応対していた。 ナリルは思わずスキップしてしまいそうな足を抑えつつカウンター席に寄りかかる。 「カナッチェさん、はい!」 「あら、依頼達成の証明書ね。 偉いわねー、まだ16なのに仕事をこなせるなんて」 「簡単だったのさー! たかだかウェアウルフ二体の討伐だからね! あたし、学校では結構いい成績だしね!」 「あらあら」 カナッチェはコロコロと笑い、その証明書を受け取った。笑顔のまま証明書に目を通す。 すると、カナッチェの顔が少し曇った。 「ナリルちゃん、あなた一人で行ったの?」 「もちろん、これくらい一人で出来るさ!」 「だめよーナリルちゃん。 ここアナグラじゃ、新人は一年間誰かとパートナーを組んで仕事することになってるのよ。 これじゃ、規則違反でおじいちゃんに怒られるわよー」 「う……マスターに?」 「そ、マスターのおじいちゃんに」
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