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カナッチェは変わらず笑顔だが、どこか硬い。やはり怖い人なのか、ナリルはそんな考えを抱きながら一連を見ていた。
男の口が、開いた。
「依頼終了の証明書の提出に来ました。 そこに書いてあるとおりです」
「ええ、確かに確認したわ。 ご苦労さま、レフィ」
なんと、予想以上に丁寧な言葉遣い。これにはナリルも驚かざるをえなかった。てっきり荒々しい口調で話すものとばかり思っていたが、人は見かけによらないものだ。
ナリルは勇気を出して、レフィと呼ばれた男の横に立った。いつもどおり笑顔を浮かべる。
「こんちわー! 初めまして、あたしナリル・フリって言います!
レフィさん、ですよね」
レフィがナリルの方を見たとき、その目は凄まじく冷たいものになっていた。全てを見透かし凍りつかせるような、そんな目。
一瞬で後悔の念がふつふつと湧いてきたナリルだが引くわけにはいかない。ひきつりつつある顔を抑える。
「あのですね、実はあたし、新人なんですけど、パートナーを組まずに仕事しちゃって……」
「話はそれだけ? 僕は忙しいんだ、次の仕事がある。
要件は手短に」
「は、はい!」
丁寧な物言いだが、有無を言わさない冷たいさ。ナリルは思わず背すじを伸ばした。
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