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「それで、レフィさんにあたしのパートナーになって欲しくて……。
あ、パートナーって言っても書類に書くだけで、仕事はもうあたしがしちゃってて……」
「知らないよ、そんなこと」
レフィはナリルに背を向けた。
「カナッチェさん、新しい仕事は?」
「そうね、その前にマスターがあなたを呼んでるわー。
行ってね」
「あのジジイ、なんの用なんだろうね。
まあいいや」
それだけ言うと、レフィは奥の扉を入っていった。
後には呆然とするナリルだけが残され、どうしたものかと目を泳がせている。
カナッチェはと言うと、安堵の息を吐いてうなだれた。
「ふぇー、緊張したわー」
「か、カナッチェさん。 あの人一体なんなんです……?」
「ああ、彼? 彼はレフィ・アラルト。
このアナグラでもなかなかの実力を持ってる人よ。
厄介な討伐依頼を一人でこなすことで有名なのー」
「へー、それならどんな術を使うのか見てみたかったのさ」
「ナリルちゃん!」
咄嗟にカナッチェはナリルの口を塞いだ。
「彼の前で術の話しちゃだめよ……!
それこそ殺される……!」
「ふぁ、ふぁい……」
ナリルは必死に首を縦に振って肯定の意を示す。ここまでカナッチェが必死になるのも珍しい、いつもは穏やかな口調で笑顔を絶やさない人なのに。
カナッチェはナリルから手を離した。
「さて……、マスターはなんの話をするのかねえ……」
レフィが消えた奥の扉を見ながらカナッチェは呟いた。
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