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1st
――それは、いつ、どこで、誰との出来事だったのだろう。
靄のかかった思考の中で僕は頭を振った。気がつくと、僕の手には冷たくて、薄い何かが握られていた。握っていた手を開く。
少し汚れたブロンズ色のプレート。それは、僕の職業である異文化親善大使、もとい高等召喚魔術師にとっての商売道具の契約のプレートだった。
契約の証である中央のクリスタルにはちゃんと色が入っている。それは薄汚れたプレートには似つかわしくなく、オーロラの様に色が混ざって、しっかりと発光していたが、その下にあるはずの契約の文章は刻まれていない。
どこか懐かしい、それでいてふんわりと暖かい……
涙が、零れた。
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