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最初に感じたのは、もしかしたら、これで学校に行かなくてもいいのかもしれないという、期待の心だった。それを思うと、僕の気管の部分にたまっていた黒いものが、嘘のようななくなり、とても爽やかな気分に包まれた。もしかしたら、本当に、学校に行かなくてもいいのかもしれない。
けれど、その気分は、次に電車内に響き渡った言葉により、木っ端微塵に、吹き飛んだ。
僕のいる、三号車の扉が不意に空けられた。そして、出てきた生徒がいった言葉が、こうだった。
人が、死んだって。
㊦
不意に、僕の気管から消え去っていた黒いものが、僕の気管に、再び戻ってきた。人が、死んだ。自殺、だろうか。いや、それよりも。人が、死んだ。それが、平和だった、僕の生活を、ぼろぼろに引き裂いたような気がした。人が死んだ。
それなのに。何だろうか。この、電車内を満たす歓声は。なぜ、みんな喜んでいる。皆が口にする言葉。
よっしゃー。これで、学校に行かなくてもすむ。
結局、皆が考えていたことは、この僕と、全く一緒だった。
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