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……。
そこには顔中泥だらけで、満面の笑顔の愛莉ちゃんと、ほぼ空っぽのバケツ、そしてバケツ一杯あった水がなくなるのが納得できるほど大量な数の泥団子があった。
一体どうやったら土台を作ってる間にこの量の泥団子が作れるのか知りたいよ。
……多分わかっても真似できないだろうけど…。
「愛莉ちゃん…、せっかく僕が汲んできた水ほとんど使っちゃったの!? お城作るのに残った水じゃ足りないよぉ…」
少し呆れながら愛莉ちゃんに言うと、愛莉ちゃんはさっきまで笑顔だったのがみるみる内に、目に涙を浮かべ今にも泣き出しそうな顔になってしまった…。
思わず「しまった!」という言葉が頭の中を駆け巡る。
「ごめんね祐くん…。わたし…、おだん…ヒック、作るの楽しくて…ウェッ…ね、祐くんに…エグッ…ほめてもらいたくて…、それで…、それでね…」
泣くのを我慢しようとしているのか、涙が出てこないように目の辺りを必死に拭う。
あぁ、そんな汚れた手で汚れた顔をこするとさらに…。
思ったとおり愛莉ちゃんの顔は涙と泥でぐちゃぐちゃになっていた。
って、それよりも…。
「い、いやぁ、その泥団子めちゃくちゃおいしそうに見えるね! こんな繊細に泥で団子を再現できるのは愛莉ちゃんだけだよ~!! もう天才だね!うん!」
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