あの子はいつも一人。

4/52
前へ
/247ページ
次へ
「月子?」 その隣から初美が、反応を示さない月子に声をかけた。 「沙代の髪の毛が生き物みたいって思って、つい。」 初美に向かって言うと初美が沙代に視線を移し、その後「確かにね」と言って笑った。 「どうせ癖っ毛ですよー。」 唇を僅かに尖らせて沙代が抗議したのを他所に月子と初美は顔を見合わせてまた笑った。 その光景を少し離れていたところから見ている者がいた。聖だった。 そんな視線に気がつくこともなく、三人は話に花を咲かせた。 やがて本鈴が鳴り響き各自の席へ戻り、授業が始まると休み時間のような騒々しさが嘘のように静かな空間となる。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加