《黒色》

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 玄関で待っていると、一人の少女が朝日に照らされながら近づいてきた。 「おはよう。九黒」 「おはよう。しー君」  二人揃って挨拶を済ませ、学校への道を歩き始める。 「それにしても、しー君。今日はいい天気だと思わないか?」  僕の隣を歩く九黒は空を見上げながらそう言った。僕もつられて見上げてみると、空には雲一つ無く、青空には太陽が泳いでいるだけだった。なんとなく心を見透かされたような印象を受け、僕はすこしむっとした。 「僕としては雲がもう少しあったほうが風情があっていいと思うけどね」  むっとした僕はすこしだけ、ひねくれてみることにした。まぁ、僕には雨が一番あっているんだけどね。そんななんの根拠も無い戯言を、僕が吹聴してるのを察したのか、九黒は楽しそうに返答してきた。 「しー君は面白いな。空に浮かぶ塵が多いほうがいいなんて」  うむ、やはり九黒は抜け目がない。付き合い始めてから三日間しか経っていないが、九黒が真意を詠むことに長けているのを、僕はしっかり理解していた。こうやって理解していながらも、戯言めいた事を吐いてしまうのは、九黒がひねくれてるせいなのか、はたまた、僕がひねくれているせいなのか。  ……恋愛とは難しいものだ。
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