殺人鬼との日常《カップ麺》

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 そして、お湯が沸いた。  待ってましたとばかりにアリスは、空の容器に零れそうなくらいお湯を注いで、容器から剥がされずに残っていた蓋をしてから、 「ガトー、今から三分だよな?」  と、こちらを振り向くこともせずに聞いてくる。  それに僕は…… 「…………」  返す言葉もなかった。  空の容器にお湯を注いだくらいじゃラーメンは出来ないことなんて、いまどき幼稚園児でも知ってるぞ!? なんなんだこいつは!? 殺人鬼どころか、本当に人間かどうかすら疑うレベルの無知度だ。 「おいガトー、聞いてるのか?」  もしかするとこのアリスという女、カップ麺を買うことすらできない貧乏一家で育ってきたのかもしれない。そしてそれが嫌になって、考え浅くも家出してきたのだろう。 「また無視か。仕方ない、自分でどうにかしよう」  そして空腹には慣れていたために行き倒れることはなかったが、遂に体が限界を迎えて記憶障害が起こり、自分を殺人鬼だと思い込んでしまっているというわけか。そうだったのか。 「……よし、そろそろいい頃だろう」  ならばどうしたものか……  ――と、気づけばアリスは相変わらず無表情のまま、お湯しか入れていない空だったカップ麺の蓋を、今まさに開けようとしているところだった。
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