殺人鬼との日常《カップ麺》

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「できてるといいな……」  蓋のちょびっと出ている部分を親指と人差し指でちょこんとつまみ、そう呟くアリス。  できてたらそれだけで生きて行けるぞ。いろんな意味で。  と、僕は心の中でツッコミを入れる。 「では……」  と言いながらアリスは、思い切ったように一気に蓋を開いた。 「…………」  僕はそれを無言で見つめる。 「……ごくり」  アリスが喉を鳴らしながら容器を覗き込む。  僕のいるこのソファーからだと、アリスの表情を窺い知ることはできない。しかし、彼女の背中が一瞬びくっと震えたのを、僕は見逃さなかった。  そして僕は、アリスが今何を思っているのか考える。  ラーメンができていないことへの悲しみ又は絶望? それとも嘘を教えた(彼女はそう思っているだろう)僕への怒り? なんにせよ、僕はまたこいつと面倒な問答をしなければならないだろうな。  と、そう考える。  結局、その答えはいくばくかの時間が過ぎてからすぐにわかる。  彼女はこちらに振り向いて、無表情のまま、悲しみと、絶望と、怒りを含んだ声音でこう言った。 「ガトー……ラーメンは……?」
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