憑き物

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「ワタシは殺人鬼だ」  と、アリスと名乗った彼女はそう言った。  澄んだ真っ黒の瞳に、全体的に整った容姿。僕は男だからよくわからないけれど、多分よく手入れされているであろう黒髪は腰まで伸びている。  14、15歳と思われる華奢な体からは、彼女が殺人鬼だなんて到底思えない。 「馬鹿か君は」 「馬鹿じゃない」  アリスは感情の起伏が見られない無表情で、そう返した。 「なんで馬鹿になる」 「君が殺人鬼なんて信じられないさ。そんな細い腕で人が殺せるものか」 「殺せるさ」  アリスはあっさりと言った。やはり眉一つ動かさない。 「今ここでキミを殺すことくらい容易いよ、ワタシには」  そう、平然と言って退ける。 「じゃあ、やってみろよ」  普段の僕ならこんなことで意地を張ったりはしないのだが、どうしてかこの時は違った。意味もなくアリスを挑発するような発言をしてしまう。  すると彼女は変わらず無表情のままで。 「…………できない」  ずいぶん溜めてからそう言った。 「ほら、できないじゃないか」 「殺してほしいのか? ……命を粗末にするなよ」  そんなことを言うなんて、もし殺人鬼というのが本当だとしたら舐められているとしか思えない。 「はいはい、わかった、もういいよ」
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