憑き物

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 僕があしらって言うと、彼女はこちらを真っ直ぐに見る。 「…………」  無言。何を考えているかわからない、相変わらず無表情な瞳で、僕を縫い止めるかのように見つめる。 「ぐ……」  彼女の深い漆黒の瞳に見つめられると、なんだか悪いことでもしている気分になる。  僕はなぜだかばつが悪くなって目を逸らした。  同じタイミングで彼女が言う。 「キミが信じないならそれでもいい。キミを本気で殺すつもりはまだないから」  無表情をまったく崩さずに。あくまでも無感情な声音で。  それに僕は溜息をひとつ落として、言った。 「ところで……アリスって言ったっけ? 君はなぜ僕の家(うち)にいる?」 「……それは、『ガトー』のことが気に入ったから」 「ちょっと待てよ『ガトー』って誰だ」  僕がこめかみを引き攣らせると、アリスは不思議そうに首を傾げ、僕を指差した。  いやいやいや、僕の名前は『柏木(かしわぎ)雅桐(まさきり)』で『ガトー』じゃないし。『ガトー』どっから出てきた。
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