18人が本棚に入れています
本棚に追加
僕があしらって言うと、彼女はこちらを真っ直ぐに見る。
「…………」
無言。何を考えているかわからない、相変わらず無表情な瞳で、僕を縫い止めるかのように見つめる。
「ぐ……」
彼女の深い漆黒の瞳に見つめられると、なんだか悪いことでもしている気分になる。
僕はなぜだかばつが悪くなって目を逸らした。
同じタイミングで彼女が言う。
「キミが信じないならそれでもいい。キミを本気で殺すつもりはまだないから」
無表情をまったく崩さずに。あくまでも無感情な声音で。
それに僕は溜息をひとつ落として、言った。
「ところで……アリスって言ったっけ? 君はなぜ僕の家(うち)にいる?」
「……それは、『ガトー』のことが気に入ったから」
「ちょっと待てよ『ガトー』って誰だ」
僕がこめかみを引き攣らせると、アリスは不思議そうに首を傾げ、僕を指差した。
いやいやいや、僕の名前は『柏木(かしわぎ)雅桐(まさきり)』で『ガトー』じゃないし。『ガトー』どっから出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!