憑き物

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「表札に雅桐(がとう)って」  こいつはバカか!? 「それは『まさきり』と読むんだ。『ガトー』じゃない」  僕がそう言うと、アリスはまた首を傾げて指を差す。 「『まさきり』……?」  それに僕は、当然だ、と頷く。 「『ガトー』……?」  それに僕は、そんなわけない、と首を横に振る。  するとアリスは左右に何度も首を傾げる。  右。左。右。左。……と、からくり人形さながらの機械的な動きを繰り返し、やがて。 「あ、そうか」  相変わらずの無表情のまま、なるほど、と右拳を左手の平にポンッと打ってから、 「ガトー」  と、僕のことを指差した。
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