憑き物

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 それに僕は―― 「なら、勝手にしろ」  と言っていた。  特に他意はない。……はずだ。強いて上げるとするならば、僕もこの自称殺人鬼のことが知りたくなったから、か。 「部屋はここ(リビング)の隣を使え。しばらく置いてやる」  そう僕が言うと、彼女は。 「ガトーと同じ部屋でいい。寝る場所もいらない」  とか言ってきて。  それに僕は、ため息混じりにこう返す。 「本気で言ってるのかそれ」 「本気だ」 「僕はまだ最近二十歳を迎えたばかりなんだぞ」 「それはおめでとう」 「そうじゃない。女っ気のない僕なんかと同じ部屋で、ありえないけど万が一僕が君を襲ったりなんかしてみろ」  と言っても彼女は、 「別に気にしない。自分の身くらい、自分で守れるし」  やはり頑なな無表情でそう答える。  ……仕方ないか。僕もまさか本気で襲おうなんて考えちゃいないし。  なんて風に僕は自分を納得させてから、 「やれやれ、やっかいな“モノ”に取り憑かれたもんだよ」  と、アリスにも聞こえないくらい小さく呟いた。
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