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~?side~
ガチャンと屋上に入ると、黒髪のショートの女がいた。
………先客か。
そう思い、仕方なく給水棟の上に行くことにした。
階段の方へ歩く途中で女は俺に気づき、勢いよく振り向いた。
女はビックリした顔で俺を見た。
俺も驚いた顔で女を見た。
とてつもなく綺麗な顔だったから。
女は急いでハンカチを取り出し、自らの目を拭いた。
あぁ、泣いていたのか。
なんで泣いたかは知らない。
「…………どうかしたのか?」
綺麗だったからって理由じゃなくて、なんでかほっとけなかった。
「な、なんでもないです…」
その態度もなんだか可愛くて、俺は女に歩み寄った。
しかし、女はだんだんと後退りしていくばかり。
「どうした?」
「こ……、こないで」
女は転んだ。
痛そうだったら早く近寄り、大丈夫かと声をかけた。
しかし、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。生きててごめんなさい。死ねなくてごめんなさい。私は、どうしようもないクズなんです……。ごめんなさいごめんなさい」
女は呪文を唱えるようにモゴモゴと言った。
なにか訳ありだなとここで確信した。
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