たとえば、俺の場合…

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眞菜を抱きしめ、ふと月を見ると、覆っていた雲は流れ、今ではまん丸に輝いていた。 「死にたくない…死にたくないよぉ!お兄ちゃん!」 強く抱きつく眞菜の目からは、溜めていた涙が滝のように流れていた。 服が濡れていく、それに連れて、俺の目も濡れ始めた。 「分かってるよ、眞菜がどんなに生きたいか、俺…分かってるから」 「お兄ちゃんは…分からないよぉ、だってお兄ちゃんは来月も来年も再来年も、月を見上げることが出来るじゃない?」 たとえば、俺の場合… 妹の声が冷たくなって行き、その言葉に恐怖すら感じた時、何も言えずにそっと妹から手を、体を…離してしまう。 「ねぇ‥お兄ちゃん?」 眞菜の顔に闇が掛かり、何故か俺は後ずさった。 嫉み…嫉妬…眞菜からそういった暗い念が感じられたからだ。 「ど、どうした…?」 俺の声は震えていたと思う、肌を掠める肌寒い風のためか、眞菜への恐怖か…俺には分からなかった。
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