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俺が後ずさって、どれほどの時が経ったのだろう。
月は雲に隠れ、夜はまた少し暗くなった。
「こうやって外で散歩するのも、当たり前のように食べるご飯も、ただ水を飲むのも…ふと月を見上げることさえも、何気ない一分一秒が私にとってはとても大切なものに思えてくる…時計の音に怯え、朝を迎えることに怯える…分かる?お兄ちゃんにこの気持ちが?」
まるで、月が輝きを失うまさにその時を待っていたかのように、眞菜はそう語った。
「ごめんな兄ちゃん、知ったかしちまったよ…そうだよな、分かるはず無いよな?」
「分かってほしくないよ…」
眞菜に対して恐怖を感じたことを恥じた。眞菜には嫉みも嫉妬も無いのだ。ただ、俺に生きてほしいだけなのだ。
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