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次の日から、隆弘と名乗る男の子は、眞菜に取り憑くように話しかけた。
しかし、眞菜はいつも天井を見つめてピクリとも動かない。
お母さんやお父さんが見舞いに来ても、まったく動じない。
でもお兄ちゃんが来た時には、スイッチを入れたかのように、ベッドから這い上がりお兄ちゃんに抱きついては涙を流していた。
隆弘はその光景を見つめ、心苦しかった。僕も、あんな風に抱きつきたい。僕も、最後はあんな人と…
その病室は、命が残り少ない人物達の為に特別に作られた病室…この病室の中で眠る人達は皆、あと一年以内には事切れてしまう人物ということだ。
隆弘もまた、その中の1人なのだ。
そのことはもちろん隆弘も知っている。
間もなく消え去る人間が2人、その時を震えて待っている。
「君は?君も…」
眞菜のお兄ちゃんが僕に話しかけている。
隆弘は俯いていた顔を上げ、少しその顔が和らいだ。
「僕は隆弘…タイムリミットは一週間ちょっと…あなたは」
「俺は博人、眞菜のお兄ちゃんだよ‥」
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