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「ッハァ…ハッ…ハッ…」
真っ暗な森の中を懸命に走るひとつの影があった。
どれほど走ったのだろうか。
息はもう切れ切れで顔には大量の汗が滲んでいる。
その腕には奇妙な模様があった。
「あっちだ!追え!!」
その影を追う無数の人々。
逃げる影はその首元のネックレスのチェーンを引き千切り、ネックレスの先端の尖った部分を首筋に当てた。
「打てぇぇ!!体を狙え!!絶対に殺すな!!」
後ろから追ってくる号令がきこえたかどうか分からないうちに影は自らの首をそのネックレスで鋭く突き、掻き切った。
その瞬間から足はもつれ森に赤黒い血飛沫が勢いよく飛ぶ。
「今回の人生は…これで良い…」
号令に伴った発砲により身体中に穴があく。
しかし影の口元にはうっすら笑みが浮かんでいた。
「生きたい…」
薄れる意識の中で生きることを諦めた影はそっと呟いた。
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