第10話 諒先輩と千衣子

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真面目になったと思ったら、すぐにふざけてみせる。 飄々とした態度で、掴んだと思ったらするりとすり抜ける。 ……もしかしたら、トマくん以上に掴み辛いかもしれない。 トマくんは、分かりづらいけど微かながら表情の変化がある。 怒ったらちょっとだけ眉間にシワが寄って、嬉しいとちょっとだけ口を緩める。 微かだけど、嬉しい変化。 ――けど、諒先輩は。 「ちーこ」 「わっ…」 グイ、と腕を引かれる。 何かと思い諒先輩を見ると、私のさっきまでいたすぐ横を自転車が通りすぎていった。 「ベル鳴ってたよー? 気付かなかった?」 「す、すみません……、考えごとをしてて……」 「なにそれ、アヤシー」 くすくすと笑う。  
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