No.001

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俺の世界から見える外の景色は、その窓から見える空だけ。 Lv1のレイの部屋だって、窓の大きさだけは変わらない。 あ、レイと言えば…。 夜に部屋に来いとか言ってたっけ。 だが、俺達の就業時間は大抵9:00-18:00まで。 晩飯が18:00-19:30の間支給されている。 晩飯にも顔を出さなかったし、この2時間何をしていたと言おうか。 普段帰りが遅くなる時にはあいつの部屋には行かないし、言い訳を考える必要も無かった。 晩飯で会うと必ず、部屋に招かれるのだけれど。 やはり、こんな寝室の俺に同情している所があるのだろうか。 俺は捲りあげていた繋ぎの袖を下ろすと、手首の生々しい痣を隠した。 あいつには、こんな汚い世界は知られたくない。 あいつの緑色の瞳には、俺のような穢れた光は写したくない。 部屋を出てLv1の部屋へと向かう。 Lv1のフロアには、看守が立っている門の様なものを通らなくてはならない。 「レイの…、ああ、いやNo1030の部屋に」 「…通れ」 看守は手に持つ機械で何かを確認すると、クイッと俺を中に入るよう顎で指した。 真っ白な空間に足を踏み入れ、1030の札の着いた部屋を目指す。 何回来ても、この空間には慣れない。 「よ!ジン。お疲れ」 あちらから扉が開かれ、レイが顔を覗かせた。 「おう。お疲れ」 部屋へと招き入れられ、俺は部屋の中にあるイスに腰を下ろした。 テーブルを挟んだ向こう側にレイもまた腰を下ろす。 広いとは言えないものの、テーブルとイスがあり、寝る時以外は壁に仕舞われたベッドがある。 レイの部屋は、俺の部屋の何倍も綺麗な真っ白の部屋だ。 「てかお前、なんで晩飯来なかったの?」 「あー。なんか仕事長引いちまって」 「は?時間厳守のこの塔でんな事あんのかよ」 レイが壁に着いた何種類かのボタンで何らかの操作をすると、2つのお茶がテーブルの下から出てくる。 きっとレイにとってはこれが常識なんだろうな、と思いながらそのお茶に視線を落とした。
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