No.001

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そして、75年の時が過ぎた時…30階へと連れて行かれる。 そこから帰ってきたものは、1人としていなかった。 つまりは生まれてから75年、なにかの為に働き続け、外の世界を知らぬままに死んでいくのだ。 そしてその時近しい人々の中からも、消える。 まるでこの世にそんな人いなかったかのように、無情に世界は回っていく。 俺たちの耳に付けられたタグは、生まれた時に付けられたもので今では皮膚に癒着している。 目の色と比例しているこのタグには、赤、黄、緑、青の4色がある。 そして、そのタグの色で俺たちは格付けされるのだ。 緑Lv1 黄Lv2 青Lv3 赤Lv4 このレベルによって、この塔の中での生活ランクが決まる。 寝室や仕事の量、内容もレベルによって決められる。 簡単に言えば緑が最高Lv、赤が最低Lvってとこだ。 今現在この塔には50名程のワケア民族が拘束されているが、その中で1番多いLvは黄と青だ。 そして緑が10数名…赤が…… 「おい、No.1028。依頼だ」 黒の封筒を振りながら寄ってくる黒髪の看守に、俺は掃除の手を止め会釈をした。 「早急に支度をして迎え。場所、相手の名前は中に書いてある」 ふぅと息を吐いて、掃除用具の片付けをする。 急いで風呂に入らなくてはならない。 封筒を開きながら自室へと向かう。 すると 「唯一の最低ランクとして、精々働けよ」 グッと封筒を掴む手に力が籠った。 そう、今現在最低ランクの赤は俺1人。 と言うより、この塔始まって以来のLv4らしい。 んな事は知ったこっちゃねえけど。 【25階マーリン】 中身だけ確認して、封筒はグシャグシャに丸める。 ゴミ回収口にそれを入れて、俺は準備のため風呂場へと向かった。 ☩☩☩☩☩☩ ガチャーー 「ご依頼ありがとうございます。No1028でございます」 扉を開いて、胸に手を当て頭を下げる。
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