No.001

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「ま、Lv4には色々あんだよ」 「色々ってなんだよ」 イスに腰を下ろしてお茶を飲み始めるレイに、俺は小さく溜め息を吐いた。 依頼について何も話していない俺の行動に、レイは何かしら不信感を覚えているのかもしれない。 「それにしてもどうしたんだよ今日は」 「何が?」 「珍しいだろ、晩飯の時以外に誘ってくんの」 「ああ。ちょっと話してえ事あって。…ってかジン腹減ってんだろ?ちょっと待っててな」 レイは再びボタン操作をすると、ニコニコ笑顔でこちらへと戻って来る。 テーブルからは今度はクッキーとチョコレートが何個か出てきた。 「さすが。分かってんじゃん」 俺は自然と笑みを浮かべると、目の前に出てきた大好物を手に取った。 「もう長い付き合いだからな」 レイは再び俺の目の前に腰を下ろして、真剣な趣で口を開く。 「お前なんか俺に隠してる事あるだろ」 「なんだよ、突然」 確信を持ったように言うレイに、俺は口の端に着いたチョコを拭った。 お茶を1口飲んで、レイの目を見返す。 まさか…仕事の事がバレているのか? いや、でもあれは秘密事項のはずだ。 どこからも漏れるはずはねえ。 「最近お前、なんか考え込んでるような顔してる気がするから」 俺が完全に脱出を考え始めたのは、今から数ヶ月前の事だ。 それからマーリンを使って色々な情報を集めた。 外の世界の事や、ワケア民族の過去…… 色んなことを知れば知るほど、外の世界への憧れは強くなっていった。 こいつは、いつから俺の変化に気づいていたのだろうか。 「なあ。なんかあるなら言ってくれよ。相談しろよ」 黙り込む俺に、レイは続けて声を掛ける。 けど、俺はこいつを巻き込んでもいいのだろうか。 生きて外に出られる確率はきっと1%も無い。 それに出られても外で生きる術を、俺たちは知らない。 そんな道に、こいつを引き込んでも良いのだろうか。
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