No.001

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「何もねえよ。気にすんな」 フッと笑いながら言うと、レイは大きなため息を吐いた。 「やっぱ馬鹿だな。馬鹿ジン」 「は!?なんだよ急に」 「お前のその笑い方、嘘ついてる証拠」 呆れたように言うレイから視線を逸らす。 昔からそうだ。 俺はレイに嘘がつけない。 俺は、ふぅと息を吐いてから、もう一度レイを見た。 レイはいつになく真剣な顔をしてこちらを見ている。 「俺、この塔を出ようと思ってる」 俺の言葉を聞いて、レイの切れ長の瞳が見開かれた。 綺麗な緑色をした瞳が俺の姿を反射している。 「…けどお前を巻き込むつもりはない」 「ジン…お前何言ってんだよ。無理だろ…そんなん」 「さあな。無理かもしれない。でも…やってみねえと分かんねえだろ?」 ニヤッと笑いながら言うと、レイも一緒に笑顔をうかべた。 「ジンらしいな」 「まーな」 「でもさ、なんでそんな事考え始めたんだよ」 「…レイは、この塔の外がどうなってるか考えた事あるか?」 「外?」 クッキーを口に含みながら、レイの言葉に頷く。 「そ。あんなちぃせえ窓から見える外じゃない。本物の外の世界」 頭の中に世界地図を思い浮かべる。 レイは、テーブルに肘をつきながら興味深そうに俺を見た。 「海っつーデカい水溜まりとか…森ってゆう木がいっぱいあるとことか…太陽の日差しとか……外の世界にはそんなもんがいっぱいあんだ」 「海…に、森な〜」 マーリンから聞いた外の情報をレイに伝えると、レイは頭の中に外の世界を思い浮かべているようだった。
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