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「何もねえよ。気にすんな」
フッと笑いながら言うと、レイは大きなため息を吐いた。
「やっぱ馬鹿だな。馬鹿ジン」
「は!?なんだよ急に」
「お前のその笑い方、嘘ついてる証拠」
呆れたように言うレイから視線を逸らす。
昔からそうだ。
俺はレイに嘘がつけない。
俺は、ふぅと息を吐いてから、もう一度レイを見た。
レイはいつになく真剣な顔をしてこちらを見ている。
「俺、この塔を出ようと思ってる」
俺の言葉を聞いて、レイの切れ長の瞳が見開かれた。
綺麗な緑色をした瞳が俺の姿を反射している。
「…けどお前を巻き込むつもりはない」
「ジン…お前何言ってんだよ。無理だろ…そんなん」
「さあな。無理かもしれない。でも…やってみねえと分かんねえだろ?」
ニヤッと笑いながら言うと、レイも一緒に笑顔をうかべた。
「ジンらしいな」
「まーな」
「でもさ、なんでそんな事考え始めたんだよ」
「…レイは、この塔の外がどうなってるか考えた事あるか?」
「外?」
クッキーを口に含みながら、レイの言葉に頷く。
「そ。あんなちぃせえ窓から見える外じゃない。本物の外の世界」
頭の中に世界地図を思い浮かべる。
レイは、テーブルに肘をつきながら興味深そうに俺を見た。
「海っつーデカい水溜まりとか…森ってゆう木がいっぱいあるとことか…太陽の日差しとか……外の世界にはそんなもんがいっぱいあんだ」
「海…に、森な〜」
マーリンから聞いた外の情報をレイに伝えると、レイは頭の中に外の世界を思い浮かべているようだった。
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