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レイは、そんな俺の言葉を目を伏せながらただ静かに聞いていた。
頭の中にインプットしていくように。
全てを話し終えた時、レイは真剣な趣で目を開いた。
「…随分、用心深いな」
「え?」
「お前は可笑しいと思わなかったのか?」
「何が?」
「例えば、この塔が宙に浮いているのならこんなタグ付ける意味ねえだろ?…外に続く道に電圧張ってんなら尚更だ」
「…確かに」
腕を組んで考え込むレイに、俺は深く頷いた。
レイの言う通りだ。
逃げ出さない為とはいえ、用心深すぎる。
「まあ、そんだけ心配性なんじゃねえの?」
あっけらかんと言えば、レイは大きな溜め息を吐いた。
そんなレイの仕草に俺はきょとんとしてしまう。
「さすがは馬鹿ジン」
「な、なんだよ!」
「だから…。そんだけしないといけないくらいの何かが、俺たちにあるっつー事なんじゃねえのかって事」
「何かって……。っあ!!!」
レイの言葉に、俺は閃を感じた。
昔マーリンから聞いた情報に、それっぽいものがあった。
「なあレイ。この世界には、4つの民族が居るらしい」
「4つの民族?」
「ああ。クー、カーネ、ロノ、カナロア4人の神が居て、その神々を祀っている民族がいるらしんだ」
「クーって…この塔の名前の?」
「そ。クーってのは、戦いの神らしいぜ」
「じゃあ俺らワケア民族は、クーって神を祀ってんのか?」
「いや、それは違う」
腕を組んで背もたれに寄りかかりながら、足を組む。
レイを見やると、俺の方をジッと見つめていた。
「クーを祀ってんのは、この塔の下にある街に住んでる民族だ」
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