No.001

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床の下を指さしながら言うと、レイはなるほどと頷いた。 「戦いの神クー、生命の神カーネ、農耕の神ロノ、海の神カナロア…4つの民族には、それぞれの神にちなんだ特殊能力があるらしい」 「特殊能力?」 「ああ。常人離れした怪力を持つクー民族、死んでも一度限りは生き返れるカーネ民族、土を自在に操れるロノ民族、水を自在に操れるカナロア民族…。」 「つまり、俺らワケア民族にも何かあるはずって事か?」 「そゆこと。ま、俺らには神を祀る習慣なんてねえけどな」 俺の言わんとしている事を直ぐに理解してくれるレイ。 さすがだな。 頭の回転が早いと、話をするのも楽で良い。 そんな事を思いながら、考え込んでいるレイを見つめる。 レイは、顎に手を当てながらこちらへと視線を向けた。 「その考えで行くと、俺らが祀っているはずの神はワケアっつー神になるって事だよな」 「そうなるな」 「ワケアが何の神かが分かれば、俺らの能力も少しは予測しやすくなるな」 「ああ、それなら…。言い伝えでは天空を司る神だっつってたぜ」 「天空を…?」 「ま、言い伝えだから確証はねえけどな」 2人揃って考え込むけれど、たかが数秒考えたからと言って答えが出る問題でないことはお互いに分かっていた。 「そもそも…もしかしたら俺たちだけが特殊能力を持ってねえからこうして監禁されてんのかもしれねえけどな」 「俺らがこんな生活を強いられてる理由は分からねえのか?」 「なーんも。てかワケア民族に関することを口にしたり調べたりすんのは国で禁止されてるらしい」 グーと上に伸びながら言えば、レイは足を持ち上げてイスの上で体育座りをした。 「特殊能力があったとすれば、17年間その能力に気付かずに生きていたってのは無理な話か」 まるで独り言のように呟くレイに対し、俺はポケットから懐中時計を取り出し時間を確認した。 時計の針は23:30を指している。 「そろそろ消灯だから行くわ」 「ん?…ああ、もうそんな時間か」 この塔の消灯は24:00と決まっている。 その時間には確実に自室にいなければならない。 「ごちそうさん」 「また明日な!ジン」 レイの笑顔に見送られて、俺はあの汚く暗い自室へと一人帰った。
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