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「ジン!今日も部屋来れるか?」
「おー。また夜な」
ヒラヒラと背中越しに手を振りながら、俺は食堂を後にする。
「ーーほら、またあの赤目と…」
「まったく、Lv1としての自覚あるのかしら」
「レイにも困ったものよね」
食堂を後にする直前、聞こえてきたのは叔母様方のコソコソ話だった。
やっぱ俺と仲良くしている事でレイには嫌な思いをさせてるんだろうな…
若者になればなるほど、Lvでの差別は無くなっていってる。
けど、やはり年齢が上であればあるほどにLvの低いものを格下として見下す人が多い。
そんなことして、何が楽しいんだか。
そして、その輪の中のどこかにレイの母親がいるってのがまた、俺のやるせない気持ちを強めた。
俺にはもう母親は居ないから母親に対する思いがどんな物か、わかることは無いけれど。
この塔では、自分の母親の顔を知ることは無い。
生まれ落ちた瞬間の記憶があるのなら別だけど。
生まれてすぐ赤ん坊は1階に降ろされちまうから。
俺たちを育てたのは母親でも何でもない、どこかの女の人。
だから、17年経って母親と同じ階層に来たとしても、母親がどの人かだなんて分からない。
ひとつわかる事は、親もきっと同じ目の色をしているであろう事だけ。
俺の中に眠るあの記憶は、現実的に考えたらありえない事なんだ…。
母親に会ったことなんてあるはずがない。
会ったとしても気づけるはずない。
お互いにーーー。
俺は一度自室に戻り、昨日の晩に受け取った黒い封筒を開いた。
【9:00 27階レナ】
【13:00 20階カリン】
【17:00 25階マーリン】
…マーリン……??
って…あのマーリンか?
いや、でもまだ前回から3日しか経ってねえぞ?
いつもだったら月に2回くらいの頻度で、2週間に1回くらいしか来ないのに。
時計を見ると、針は既に8:30を指していた。
やべっ!!
俺は慌てて歯磨きを済ませると、黒の服を身にまとって27階を目指した。
☩☩☩☩☩☩
「ご依頼ありがとうございます。No1028でございます」
顔を上げたそこに居たのは、何かいつもと様子の違うマーリンだった。
「いらっしゃい、ジン」
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