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「どした?なんかあったか?」
マーリンに誘われるままに部屋に足を踏み入れながら訪ねると、マーリンは何も言わずに俺の腕に抱き着いてきた。
2人で足踏みを揃えながらベッドへと進んでいく。
並んで腰を下ろすと、マーリンは俯いたままに口を開いた。
「一週間後…」
唐突なマーリンの言葉に、俺はただ彼女を見つめる。
「一週間後、南から3番目の窓の真下の壁を壊すわ」
「…は?」
一瞬マーリンが何を言っているかが分からなくて、脳が考える事を止めた。
「夜の23:00。一発で大穴を空ける。そしたら、そこから勢い良く飛び出しなさい。飛び出したら、真っ直ぐ南に飛ぶのよ。20km飛ぶと、大きな森が見えるから」
「え?ちょ、ちょっと待て…マーリン」
「その大きな森の中にいる、ヒナという少女を探しなさい」
戸惑いを隠せない俺に対し、マーリンは俯いたまま早口でしゃべり続ける。
「待てってマーリン!」
俺は、マーリンの薄っぺらな肩を両手で掴むと、無理矢理にこちらを向かせた。
「落ち着け。俺は空なんか飛べねぇ」
「飛べるのよ、ジン」
「何…言ってんだよ」
真っ直ぐ俺の目を見据えて言うマーリンに、俺は動揺した。
空を飛べるって…そんな事現実に有り得るはずがない。
「ずっと…考えてたの。あなたが、ここを抜け出したいと言った日から」
何ヶ月も前にマーリンにそれを伝えた日を思い出した。
沢山の情報をくれて、いつも俺の力になってくれていたマーリンの姿を。
「ジン…私はね、ロノ民族の王女なの」
「……え?」
「内緒にしていて、ごめんなさい」
マーリンは俺から視線を逸らすと、小さく謝罪をした。
そして、視線を逸らしたままで言葉を続ける。
「私の国には、王家しか入る事を許されていない図書室があるわ。……何冊もの本の中で、ただ一つだけ…あなた達ワケア民族に関する事が記されている物があったの」
「で、でも…ワケア民族に関することを調べるのは……」
「大丈夫。誰にも知られてないわ」
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