No.002

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「そうゆう問題かよ…」 「聞いて、ジン」 頬に小さなマーリンの手ひらが当てられて、俺は言葉を飲み込んだ。 「その本から得られた情報は、たった一つだけだった……」 眉を八の字にして話すマーリンの姿に、心がズキリと傷んだ。 「…ここから南に進んだ所にある大きな森に、ヒナというワケア民族が住んでいるって事だけ……」 「ワケア…民族、が」 「それを知った私は、ヒナに会いに行ったわ」 塔の外側に同じワケア民族が居るという事実に、俺は衝撃を隠せなかった。 仲間が、外にいる。 それは俺にとって何より嬉しい事だった。 「金色の髪の…綺麗な少女だった」 マーリンは今にも泣き出してしまいそうな顔をしながら、それでも話を続ける。 彼女をこんなにも必死にさせているのは……俺だ。 「あなたの事を話したら、力になりたいと言ってくれたわ」 「で、でも…なんでヒナは今まで捕まること無く生きることが出来たんだ?」 「ヒナはね、大気を操って自分の住処まで人が立ち入れないようにしていたそうよ。……幻術のようなものね」 「大気を操るって…」 まるで現実での話とは思えない真実に焦った。 外の世界では、それが当たり前なのか? 「それが、あなた達ワケア民族の能力……」 「俺たち…の…?」 「大気を操り、天候を操る…空を飛べると言ったのはその為よ」 「大気を操って空を飛べって事か」 俺の言葉に、マーリンは深く頷いた。 「…マーリンは、どうしてヒナに会えたんだ?……俺たちは、ヒナに会う事はできるのか?」 「ヒナはね、自分やワケア民族に危害を加えない人と分かった時だけ道をひらくそうよ。……あなたの事はもう話してあるから、ヒナの方から迷わず道をひらいてくれるはず。」 まるで説得でもしているかのように必死に話すマーリンに、俺は頭を抱えた。 一気に沢山の情報を手に入れたせいで、頭の中を上手く整理することが出来ない。 「マーリン…俺は大気や天候なんか操れない……。操れたとして、その事に17年もの間気づかないなんて不自然すぎる…」 「いいえ」 マーリンは、優しく俺の頭を撫でるとコツンと俺の肩に頭を乗せた。 「あなた達が力を使えないのは、この塔のせいよ」 「…塔のせい?」 「ええ。私だって…この塔の中では何も力を使うことは出来ない」 「この塔にそんな特殊な力があるってのかよ…」 言いながら顔を上げれば、俺にもたれていたマーリンの顔が目の前に映し出された。 「正確には、この塔の材料になっている石に…ね」 「なるほどな…」 壁を指さしながら言うマーリンに、俺は納得をして頷く。 あのレイの部屋の設備を見れば、能力をかき消す事なんて造作もない事なんだろうと分かった。
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