No.002

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「で、問題はコレね」 マーリンは俺の耳にあるタグに触れながら心配そうに呟いた。 タグは揺らしても動かない程に皮膚に癒着している。 幅1センチほどあるそのタグは、硬い金属のようなもので出来ているのだ。 「…私が穴を空ける直前、自力でこれを外せる?」 「……ああ。」 「大丈夫?」 「要は引きちぎりゃいい話だろ」 輪っかになっているタグに人差し指を通しながら言えば、マーリンはギョッと目を見開いた。 「何言ってるのよ!!」 「何って…それ以外方法ねえじゃん」 「馬鹿!化膿したらどうするつもりなの!?」 マーリンは掴みかかりながらそう言い放つと、大きな溜め息を吐いた。 そして、ゴソゴソとポケットの中を探ると小瓶を俺の手ひらに乗せる。 手ひらに余裕で収まるその瓶をまじまじと見つめた。 その中には、茶色の…細かい…物質のような物が詰まっている。 「何だ?これ」 「砂よ」 「砂?」 「外の世界の地面を形成してるもの。外の世界を裸足で歩けば、足の裏にはこの砂が沢山つくのよ」 へぇ〜。と言いながら、俺は砂の入った小瓶を上下に揺らした。 「これは、私の能力で物質を変化させている砂。…飲めば大抵の傷口なら塞げるはず」 「大抵の傷口?」 「……この方法は、あまり提案したくはなかったけど…」 そう言って、マーリンは10cm程の刃物を俺に差し出した。 折りたたみ式のそれを2つに畳むと、それもまた俺の手ひらに乗せた。 「良い?タグが癒着してしまっているギリギリを、このナイフで切り落としなさい」 俺のタグに触れながら、真剣なマーリンの瞳が俺の瞳を見つめる。 ゴクリと生唾を飲んで自分の耳に触れる。 右耳の上側に綺麗に癒着してしまっているタグを切り落とすには、耳を半分程は切り落とさなければならなそうだ。 悪寒が走った。 「マーリン、やけに準備が良いな…」 「……私がなぜ一週間後に拘るのか、分かる?」 俺の言葉に、マーリンは自らの拳を握って体をこちらに向ける。 そんなマーリンの言葉に、俺は首を左右に振って見せた。 「一週間後、クー民族の王様が国際会議の為にロノの国に来訪するの」 「それって…」 「そう。つまり、この塔を支配しているクー民族の頭が不在になるって事。…狙うはこの時しかないわ」
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